映画「フェイス」(1998)~湯村紗瑛
【1998年】
ロバート・カーライルは「トレインスポッティング」の危ないベグビー役や「フル・モンティ」のリーダーを演じた。
スコットランド出身の37歳になる俳優が、好調だった1990年代後半の英国映画界をグイグイと引っ張っていた。
1998年に公開された「フェイス」も、存在感たっぷりの迫真演技。勢いだけではない、本物が持つオーラが体中から放たれている。
作品は、造幣局を襲撃する5人の男たちの物語。盗むことには成功したが、お決まりの仲間割れ。5人のうちの誰かが、強奪金の独り占めを図るが、それぞれに事情があって話は複雑に転がっていく。
揚げ句は、警察署内での銃撃戦にまで発展し、先を読ませない。
リーダー役に扮したカーライルが犯罪の裏に内在する人間の強さ弱さを巧みに表現して、実に秀逸。共演陣も「ニル・バイ・マウス」のレイ・ウィンストンら演技派が集結。犯罪に走る心模様を、カーライルに負けじと心憎いばかりのパフォーマンスで体現する。恋人を演じたレナ・ヘディもカゲがあって魅力的。
女性監督アントニア・バードの音楽の使い方にも感心。
湯村紗瑛